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彼女の名前は 板山 静菜(いたやま しずな)二十四才。 

画家である。

普段は旅をしながらその行く先々で、

バイトをしながら転々とし生計を立てていた。

決まって宿はネットカフェ。

キャンパスにその行く先々の気に入った土地の風景を描き、

インターネットで売りに出していた。

時には高額で買われる作品も有ったが、

殆どの作品は売れ行きが芳しくは無い。

だが彼女は他に才能は無く、

強いて言えば順応性があるので、

バイト先では評判は良かった位だった。

昔で言うならば瘋癲(ふうてん)

(定職を持たず、ぶらぶらと暮らす人)

今で言うならフリーターである。

彼女は独り言を呟く、「もう描けない..」。

そう言ってまた俯いた。

車窓は晴れ上げた空に一つだけ小さな雲が浮かんでいた。

彼女は絶望感でいっぱいだった。

何故なら彼女の感性に引っ掛かる風景が見当たらなく成っていた。

彼女の求める物は古風な風景。

田舎で農作業をする老人や、

古びた店舗で働く飲食店の店主。

古いローカル鉄道など、

そうした物はどんどん淘汰している世の中で、

車窓から見える風景も今は人けの無い、

寂しい廃墟や荒れ果てた田畑などが多く、

芸術と成る物がどんどん失われて行く日本の風景。

加工されたレトロチックな物では物足りない静菜。

本物の古風な風景や街並みを描きたくて、

定職を持たずに旅に出る毎日だったからだ。

すると急に眠気が襲う。

そしてうたた寝をする静菜。

田舎の簡素な風景が眠りを誘ったのであった。

ふと目を覚ますと目の前に一人の男性が、

向かい側の席に座って本を読んでいた。

年の頃は30才半ばで穏やかな表情で眼鏡を掛けて、

単行本を読んでいる様子。

辺りを見回すと先程とは違い数多くの人が乗車していた。

何時まで眠っていたのだろうか、

宛ての無い旅に出ている静菜には下車する目的の駅は無く、

日が沈む頃適当な駅で下車をして、

その駅で乗り越し料金を払い、

その街の一番安い宿であるカプセルホテルか、

ネットカフェで宿を取るのがお決まりのパターン。

まだ日は高くそれほど長くは乗車して無い事を伺わせていた。

場内アナウンスが中判田駅を告げると、

電車はブレーキを緩く掛けてスローに成ると、

風景は喉かな田畑の風景から住宅街に替わる。

その時、何処かの学校の風景が目に飛び込んで来た。

彼女はそれを見て驚いた。

「え、どう言う事、未だに」と、呟いた。

その学校のグラウンドの風景は、

女子生徒が赤いブルマー姿で走っている姿だった。

そして静菜は、「え、コスプレして、

動画サイトにでもアップする撮影」と、疑問を抱いた。

そして電車は駅に到着。

だが様子がおかしい。

現代の駅とは違いこの街中で木造の大きく広い駅であった。

すると若い女性の声が聞こえると、

年代物のセーラー服を来た女子生徒二人が、

静菜が座る隣の空いている席と、

男性が座る隣の席に向かい合わせに女子生徒は座って会話をしていた。

静菜は何が起きているか把握出来なかった。

頭が混乱する静菜。

まるで神隠しに遭った様な気がしたのであった。



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